あらためて、リスキリングとは
昨年の今頃はまだこのワードが一般的に普及しているとはいえなかったのですが、今年になって急激にポピュラーなものとなってきました。そのため、今さら説明するまでもないのかもしれませんが、経済産業省によると次のように定義されています。
「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得すること/させること」。
英語の直訳だと「再度スキルを身に付ける」となりますが、その背景には、近年のデジタル化とそれとともに生まれる新しい職業、またこの先大幅に変わるであろう仕事の進め方が背景にあり、単なる学び直しではないことが見て取れます。
さらに、背景を掘り下げてみると
もともとは軍事用語だったVUCAというワードも関連しています。一言で言うと「先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態」を意味する、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)からの造語ですが、ここ数年、経済界でも多用されるようになりました。想定外のことが起き、業界の概念を覆すようなサービスが登場したりすることで、これまでの常識が非常識になるといっても過言ではありません。そこで、この時代を乗り切るためのスキルとして、急速に発展するテクノロジーの理解や自ら考える力、ポータブルスキル(持ち運び可能なスキル)が必須となります。
「単なる学び直し」ではない理由
あくまでも「これからの職業で価値を創出し続けるために、必要なスキルを身に付ける」ことが強調される点から、個人が関心に基づいてさまざまなことを学ぶこととは区別して考える必要がありそうです。言い換えると、先行き不透明な時代において、ビジネスモデルや事業戦略が変わる(変わらざるを得ない)となれば、人材戦略も必然的に変わってくるため、この戦略に沿う人材となるべく必要なスキルを身に付ける、ことに他なりませんが、ここには必ずデジタル技術の力を使った価値創造が求められます。
リスキリングへの誤解を解く
さて、ここまでの説明だと、リスキリングは一部のデジタル人材の育成や獲得の問題だ、とか、これまでのOJTの延長で対応できそうだ、とか、DXの時代にあっても、デジタルスキルよりもリーダーシップ能力や論理的思考力などソフトスキルのほうが重要だ、とする考えが出てくるのも理解できます。
しかしながら、コトはそう簡単ではなく、意識を変える必要があります。
まず、そもそもDXは企業創造の全プロセスを変え得る取り組みのはず。であるならば、デジタル戦略を考え、ロードマップを描く一部の人材ではなく、フロントラインの含む全人材に対して必要と考えるべきですし、「いまある」仕事の延長でのOJTではなく、社内に「いまない」仕事、「いま、できる人がいない」仕事のためのスキル獲得が必要なため、OJT以上の取り組みが必要になります。さらに、いわゆるソフトスキルだけを高めても、デジタル技術を実際に扱えなければ生み出せる価値は限定的になる恐れがあることも理解しておく必要があります。
このリスキリングについて、海外は先行し日本国内ではこれから本格的に進むと見られますが、次回はさらに現在の状況とこの先どうやって取り組むべきかについて掘り下げます。
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