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カスタマー・エクスペリエンス・マネジメントに取り組む

【執筆者プロフィール】
こんにちは! 株式会社福岡情報ビジネスセンターの酒井です。
福岡県北九州市出身。大学卒業後、システムエンジニア、プロジェクトリーダー/マネージャーとしてSI事業に従事。その後、技術職から営業職に異動し、ソリューション営業、営業マネージャー、営業統括責任者としてIT営業に従事。グループ会社の再編を経て、情報システム部門の立ち上げに参画。その後、福岡情報ビジネスセンターへ取締役(CCO/カスタマー担当役員)として参画。

今回も引き続き、顧客に関して思ったことや調べてわかったことなど書いていきたいと思います。
顧客との関係について興味のある方や同じような立場の方に、ぜひ読んでいただければと思います。

<前回の記事>
顧客感情を知る方法を解説 ネット・プロモーター・スコア(NPS)



CXMを成功させるために

CX改善がうまく推進できる企業もあれば、そうでない企業もあります。違いは周囲からの理解と協力を得られるかどうかです。NPS調査を行い、その結果を経営層や現場に伝える役割を担うのはマーケティング部門や経営企画部門など、企業によって違います。どの部門が担当するにせよ調査をスムーズに行い、その結果を経営方針や現場のオペレーションに反映させるには社内外のステークホルダーからの理解を得て協力を取り付ける必要があります。

まずは経営層です。一般的に企業の経営層は収益の増加や顧客満足度向上にも熱心に取り組んでいますが、その費用対効果を明確に把握できていないのが実態です。また、顧客の満足度向上にどれだけのコストをかければ収益が増えるのかの根拠を得られていないのも実態です。なので経営層にはNPSのスコアと収益には相関があることを説明する必要があります。

次に現場のスタッフです。スタッフにとってNPSは新しい評価の仕組みと感じると思います。カスタマージャーニーの一つひとつの要素についてそれが推奨度に直結するかどうかを顧客に尋ねるということは、現場のここが不十分だからNPSが上がらないという原因を追及する行為に見えるからです。なのでNPS調査を行う本来の目的をしっかりと説明して理解を得ないと、現場からはNPSへの険悪感や不信感が生まれかねません。

最後は顧客です。NPSではたった一つの究極の質問が注目されがちですが、質問の回答をより高いものへ変えていくには付随するいくつもの質問が必要となり、その質問に時間を割いて顧客に回答をしてもらわなくてはなりません。なので特に顧客にはNPS調査への理解と協力を得ることが重要となります。



経営層を本気にさせる

経営層にとって企業の収益を向上させることは重要なミッションです。そのため、顧客体験の向上に向けた施策に取り組む際にはその施策が本当に収益の増加に結びつくのかをNPSと自社の収益の関連性を具体的な数字と共に提示して、施策と収益との関連を可視化する必要があります。

顧客にNPS調査をする際、過去にどれくらいの頻度で買い物をしているか、あるいは金額を使っているかも調査すればNPSスコアと頻度・金額の相関ができます。頻度や金額はCRMなどのデータと紐付けることもできます。それらを証明することによって経営層はスコアの向上が収益を増加させることに納得し、さらにNPSを向上させるにはどの顧客体験を改善すべきなのかにも強く関心を抱くようになります。

また、経営層がNPS調査に関心を示さない原因の一つに”顧客不満の納得不足”にあることがあります。本来であれば、経営層こそ事業の社会的意義を深く理解し、一人でも多くの顧客に喜んでもらうことに重点を置かなければならないのですが、顧客との距離が遠くなってしまって、顧客がどれほど不満を抱えているのか、改善されるべき課題によって顧客がどれほど困っているかを理解できずにいる場合があります。

そこで経営層には”顧客の声”を直接聞く機会を設けます。ここで重要なことは数値としてまとめたデータだけでなくリアルな声である方がよいのです。リアルでネガティブな声を届けることで経営層には現状維持では不十分だという危機感が生まれるはずです。



現場の理解を得る

「顧客の推奨度に関する調査をします」と社内に宣言したなら、顧客との接点となっている現場は間違いなく「自部たちが評価されるのか」と不安を抱きます。なのでNPS調査の目的はNPSの向上を通じての収益の向上であり、NPSを向上させることは各現場の部門目標を向上させることでもあることを説明します。顧客体験を上げたいという強い思いを人一倍持っているのが現場なので、NPS調査とその分析は顧客体験向上に必要なものであることを説明する必要があります。

さらに顧客の体験を良くすることが自分たちの業績に返ってくることに加えて自身が推奨できる、誇りに思えるサービスにしていく姿勢を共有することも重要です。また、調査結果を現場にフィードバックしないのは不信感の原因となり、改善のきっかけを失うことになります。

経営層には危機感を共有するためにネガティブなコメントを、そして現場にはモチベーションの維持向上のためにポジティブなコメントを共有する必要があります。NPSの調査結果を受けて現場が工夫をし、それがNPSの向上と収益の改善につながったら、その取り組みを成功事例として全社に周知します。それが取り組みの意義への理解を深めることになり、現場の協力を得ることになります。



顧客を巻き込む

NPSは継続して調査を続け、変化を追うことでその効果を最大限に発揮します。つまり、顧客には調査に協力し続けてもらう必要があるということです。そのためには、指摘した点が改善されたり新たな接点が設けられたりするのを顧客自身に実感してもらう必要があります。

また、指摘してくれた顧客を含め多くの人に伝えることで、改善を怠らないという企業イメージの醸成にもなります。顧客の声を聞き、改善を行う姿勢が顧客に認められれば回答率が自然と上昇してくるため、回答を集める苦労も少なくなります。

NPSには、たった一つの究極の質問といったイメージがありますが、実際にはカスタマージャーニーに沿ったいくつもの質問が付随します。一度の調査で顧客のニーズを把握しようとしたら、聞きたいことを詰め込みすぎて、回答するのに大きな負荷がかかる調査になってしまいます。

調査を複数回に分けることで、顧客にとって重要な体験が何かをその都度把握し、体験を詳細に知るための調査を重ねていきます。そうすることで変化が生まれ、顧客を飽きさせずに調査ができるだけでなく、日々注目しなければならないポイントがどこかを明確にできるようになります。顧客にとって重要な項目について聞き続けている調査こそ、真の有効な調査だと言えます。そして、この企業の調査には協力する甲斐があると顧客に思ってもらい続ける努力が必要なのです。

カスタマー・エクスペリエンス・マネジメントに取り組むポイントは、経営層を本気にさせ、現場の理解を得て、そして顧客の協力を得ることでNPS調査を継続し、調査結果や改善行動を周知することが必要であることがわかりました。
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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