最終更新日: 2023.09.07
良質なCX創出のためのeNPS活用による組織強化
【執筆者プロフィール】
こんにちは! 株式会社福岡情報ビジネスセンターの酒井です。
福岡県北九州市出身。大学卒業後、システムエンジニア、プロジェクトリーダー/マネージャーとしてSI事業に従事。その後、技術職から営業職に異動し、ソリューション営業、営業マネージャー、営業統括責任者としてIT営業に従事。グループ会社の再編を経て、情報システム部門の立ち上げに参画。その後、福岡情報ビジネスセンターへ取締役(CCO/カスタマー担当役員)として参画。
CXとEXとの関係性からEX改善を目的としたeNPSを押し上げる施策ポイントについて書いていきたいと思います。顧客との関係について興味のある方や同じような立場の方に、ぜひ読んでいただければと思います。
<前回の記事>
CX改善のために従業員の本音を知る エンプロイー・ネット・プロモーター・スコア
eNPSは属性別に分析することに意味がある
従業員の企業に対するエンゲージメントは、入社から暫くすると一度は下がるものの長く働けば働くほど高くなるようです。日本企業の場合は特にそのような傾向にあります。勤続年数が長ければ、一般的に収入が上がり、権限が増え、役職が高くなっていきます。それによってエンゲージメントは上がっていきますが、一方で勤続年数がまだ短い段階では、職場の人間関係よりも仕事内容を重視する傾向にあります。なのでeNPSを評価したり、分析するに当たっては、回答している従業員の勤続年数に注視する必要があります。
また、他社からの転職者なのか新卒者であるのか、パートやアルバイトでも主婦のように長期定着が期待できそうなのか、学生のように一定期間が過ぎたら卒業していきそうなのかによっても違いが生じます。よって、eNPS調査の結果を勤続年数別に分析してこそ意味があるのです。
改善のキーパーソンは現場マネージャー
企業や店舗に対するeNPSは、回答者一人ひとりのスコアの集合です。
同じように働いている企業や店舗に対しても、高いスコアを付ける推奨者もいれば、低いスコアを付ける批判者もいます。よって、一人ひとりの声に直接応えるというのは現実的ではないので全体として推奨者を増やし、批判者を減らすような戦略を立てることが必要です。しかし、調査結果を店舗レベルに落としたときに、どういった属性の従業員は、どういった従業員体験を重視しているのかが個別に把握できます。個別の戦術が取られるということです。
従業員が回答を行うと店舗ごとにデータ分析がおこなわれ、店長に伝わり、店長は結果を基に店舗でどのような改善をするのかを考えられます。また、事業責任者が各店舗でどのような改善が行われているかを把握でき、時には改善方法についてのアドバイスを行うこともできます。そして、店長は改善すべき課題を従業員に情報共有することで、店長だけが改善に努めるのではなく店舗全体で改善することができるようになり、より高いレベルでの活動が行われるようになります。
店長などのマネージャーには職場全体の健全な運営も求められますが、いつでも全ての従業員に対し、同じコミュニケーションを図れば良いという訳ではありません。個々の従業員の属性やステータスから、企業や店舗への評価やそれを決定付けている従業員体験が具体的に分かっていれば、それに対してふさわしいコミュニケーション方法が選べます。eNPS調査の結果を現場マネージャーに共有することで、現場の運用が柔軟になります。本部側もある現場で有効だった施策を横展開する際、ふさわしい現場はどこかを回答者の属性基準に判断できるようになります。
従業員のエンゲージメント向上をeNPSで可視化する
90年代にはパソコンでの仕事に置き換わり、2010年代後半には人の介在が最低限に抑えられたRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション) などの利用へと移行が始まりました。ものを作る運ぶなどといった作業も、ロボットへと置き換えが進みました。こうした変化は人々を単純作業や身体に負担をかける作業から解放するためのものではなく、単純作業を手放し、人にしかできないクリエイティブな作業に集中させるためのものなのです。
従業員満足度・従業員体験の向上のために何をすべきかを決めることも、人の手、特にマネージャーの手から解放すべき作業であると考えます。店長のような現場マネージャーには、組織課題の把握やモチベーションの向上なども任せてきました。さらに、どのようなスタッフにはどのようなケアをすべきなのか、スタッフはどこに働きがいを感じ、何に不満を持っているのかといった情報収集や洞察もマネージャー頼みとなっているのではないでしょうか。
従業員エンゲージメント向上はeNPSのスコアで可視化できるので、今までの施策が正しかったのかどうかを判断でき修正も容易です。こうした試みを積み重ねることでエンゲージメント低下による離職、エンゲージメント欠落による事故も防止できます。
eNPS調査とそれに基づく改善に消極的な企業も存在しますが、そうした企業の経営者は、あることを恐れているようです。それは不満をくみ上げても改善できず、結果的に従業員の不満や不信感をさらに増大させるのではないかということです。しかし、給与のようにすぐに対応することが難しい案件もありますが、じっくり調査すれば改善点も見つかるはずです。従業員エンゲージメントの向上に不可欠なeNPS調査は、これからの時代の企業責務と言っても過言ではないでしょう。
良質な顧客体験(CX)を生み出すのは従業員エンゲージメントの高い組織であり、エンゲージメントを向上させるには従業員体験(EX)を改善するeNPS調査が不可欠であることがわかりました。やはり、CXとEX、NPSとeNPSは卵とニワトリのような関係なのですね。
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。