<前回の記事>
リスキリングへの取り組み②
https://fbicenter.co.jp/blog/20220323_human
リスキリングに向けて何から着手すればよいのだろう
リスキリングを進めるにあたり、海外や日本の事例を参考にしつつ、では自社ではどういった取り組みをするべきか、具体的に着手し進行しているケースは大企業から徐々に増えてきている感があります。ただ、その事例を見ながら自社で明確な設計をもとに社員を層別し推進していくことは思いのほか難しいのではないでしょうか。もちろん正解はないものの、かといっていつまでも先延ばしにして様子を観すぎるのもよくありません。
あらためて「リスキリング」の前提を整えてみる
具体的な計画立案をする前に、あらためて今なぜ「リスキリング」が重要だと言われているのかについて整理しましょう。まず、類似キーワード「アップスキリング」との違いですが、これは現有スキルを伸ばす、新たなスキルを足して成長することを意味しており、リスキリングの意味を大きくとらえると一部含まれると解釈してもよい気もしますが、なぜあえて違うワードとしているかを考えます。また「リカレント教育」とも違います。これはいったん今の仕事から離れて学び直すことを意味するので、あえて区別したほうがよいでしょう。
とはいえ、リスキリングを進めるうえでいったんリカレントの環境に身を置くことも手段としてはあるのかもしれません。総合すると、リスキリングとはこれまでの延長線上での教育研修とは異なる考え方で臨むべきと考えます。これに”DX”というキーワードが密接に関わっていることから、単なるデジタル化だけではない、改革を伴った経営方針に沿ったスキル武装だということが言えます。このことから、リスキリングが重要だからと教育メニューを揃えたとしても、それが経営改革とリンクしていないと全体の効果を発揮することはできないかもしれません。
スキル領域を整理し学び続ける環境を整える
とはいえ、経営改革の方針が出揃うまで待っていては手遅れのため、まずは下地を整えておくことをお勧めします。リスキリングを優先すべきとアップスキリングをおざなりにしてはいけません。このため、これまでの延長線上にある研修体系を整理し、どのような切り口のコースがすでにあるか、もしくは抜け落ちているかを可視化します。
まずはハードスキルといわれるカテゴリーから当てはめてみます。ITエンジニアの例として(大雑把ですが)、テクニカル、企画・設計・開発・運用、プロジェクト・マネジメント、業務、セキュリティーなどがこれにあたります。加えて、ソフトスキルの面からみると、法人理解力、課題対応力、コミュニケーション力、セルフマネジメント力、コラボレーション力などがカバーされます。もちろんこの他にも考慮すべき領域や、特定のカテゴリーはさらに深掘りをする必要もあります。
理想的には、前回のブログで触れたキャリアビジョンとそれに連動するスキルマップが存在し、自身の現在の立ち位置と将来を見据えることのできる材料(山登りで頂上を目指すルートマップのようなイメージ)があると望ましいと考えます。このような環境は企業として準備をする必要がありますが、一つひとつの研修コースにおいては、社員が自発的に明示したうえで自らが講師を買って出るといった企業風土が醸成されることが望ましく、今後大きく成長する土台になると考えます。
さしあたって進めたいこと
従来は、企業が準備した研修を層別に受講させることで全体のスキルアップを促進し、それが個人と会社の成長につながるというモデルが一般的でした。とはいえ、体系立てて着実に進められることは稀で、もしかすると新入社員研修しか実施してない企業も多くあることも事実です。これから企業として実行すべきことは、社員全体のスキルアップを支援し続けると宣言しそれを可視化し、常に更新を続けること。しかも特定の領域が絞り込めないとすれば幅広いコースを準備し、社員自ら選択できる仕組みを持つことで、これがもしかすると変革につながるきっかけになる可能性も十分考えられます。
最近一般的になったオンライン学習の仕組みは社員の興味分野を知ることもでき有益な手段といえます。政府が提唱するAIやデータサイエンスの領域のスキル向上は確かに重要ですが、先に触れたハードスキル、ソフトスキルの土台を固めることも重要で、これらは今すぐ取り組む必要があります。
ここまでお読みいただきありがとうございました。次回からは人事評価施策について考えていきます。
▼次の記事を読む
人事評価施策への取り組み① ~人事評価制度の実態~